HRD Consultant
エイチアールディ コンサルタント
ISOについて/基礎知識
国際標準規格・認証制度
┗ ISOと審査登録について
国際標準規格であるISOマネジメントシステムのISOとは、International Organization for Standardization(国際標準化機構)の事であり、ISOの名称の由来は、ギリシャ語の接続語「ISOS」(等しいこと、一様性)に関係しています。そして、ISOの目的としては、物質及びサービスの国際交換を容易にし知的、化学的、技術的、経済分野に於ける国際間の協力を助長するために、世界的な標準化とその周辺活動の発展、開発を図ることです。組織構成は、加盟国120ヶ国の代表的な標準化機関で、日本においては1952年より工業技術院所属 日本工業標準調査会JISCが加入。JISとしてISOの翻訳規格があります。
審査登録制度について注意しなければならないのが「ISO規格」と「システム認証」とは本来別個のものであるという点です。各企業は、各国で1つ設立された「認証機関」(日本の場合は、経済産業省で認められた財団法人日本適合性認定協会:JAB。世界では、オランダ:RVA、イギリス:UKAS、アメリカ:RAB)が認定を出している、「審査登録機関」に依頼をして、「ISO規格」(もしくはこれを翻訳した国家規格)の基準を満たしているかを審査してもらい、合格すれば「適合性認定」がでるのです。また、審査登録機関によっては、日本と海外の数ヶ国の認証を同時に発行できる機関があります。
品質マネジメントシステムの定義
┗ ISO9001の基本概念
ISO9001規格による品質マネジメントシステムにおいて最も重要な点(原則)は、「顧客重視」、「リーダーシップ」、「人々の積極的参加」、「プロセスアプローチ」、「改善」、「客観的事実に基づく意思決定」、「関係性管理」の7点です。そして、最大の特徴は、品質保証という枠を広げ経営ビジョンに基づくリーダーシップ、顧客重視、従業員参画、継続的改善といった経営への体系的なアプローチを行う規格になっている点です。
具体的には、ISO9001に取り組むことで得られる可能性のある便益として、「顧客の要求事項、順守事項を満たした製品及びサービスの一貫した提供」「顧客満足の向上の機会増大」「組織の状況及び目標に関連したリスク及び機会への取組み」「この品質マネジメントシステム規格の要求事項への適合を実証できること」を挙げています。
品質マネジメントシステムを構築、運用する本来の目的は、その要求事項を満たすことで、顧客のニーズや期待に応え、事業計画を実行し、目標を達成し、業務の改善を図って、顧客満足を獲得していくことです。すなわち本来業務の永続的な活動の為、様々な組織を取り巻く内外の変化に対応をする基本的なルールを構築し、運用する事によって成果をえられる点です。
ISOマネジメントシステムの効果
┗ ISOマネジメントシステム認証取得メリット
品質マネジメントシステム(ISO9001)を運用する事によって以下のような特性が表れてきます。不具合の発見から予防に重点をおく体制へ、業務工程のポイントにおいての継続的改善、是正処置実施により実質的な成果獲得、業務システム・事業所・供給者・顧客の間でのコミュニケーションの確立、記録・重要文書情報の効果的管理、従業員・経営陣の品質システムについての認識などであります。これら特性により、効率的業務工程の導入、品質コストの管理、生産性向上、コスト削減を現実化し、顧客ニーズに対応した効率的かつ最新の品質マネジメントシステムが確立できます。
環境マネジメントシステム(ISO14001)を運用する重要なメリットとしてリスクの防止が考えられます。環境リスク防止の効果においては、法律違反に伴う刑事上の責任や環境事故等による賠償責任などの環境リスクを回避し、環境に与える影響を軽減することが出来ます。アメリカにおけるアスベスト公害やスーパーファンド法の制定による損害賠償の事例を見れば、これらのリスクに対応するリスクマネジメント計画を策定し、実施することは意義が大きいでしょう。具体的には、以下の通りです。
<地球環境問題の解決> ・効率的な省資源 ・省エネルギー対策及び検討 ・経営者、全従業員の環境問題把握の容易化及び意識向上 ・変化する環境問題への迅速な対応 ・環境リスクの事前回避
<対外的な信頼性の付与> ・産業と政府間の良好な関係の確保 ・許認可取得の容易化 ・顧客の環境期待への対応 ・企業イメージの向上 ・市場シェアの拡大 ・地域住民及び地域社会との良好な関係の維持
<環境配慮の経営管理体制の確立> ・組織及び責任範囲の明確化 ・情報伝達手段の確保 ・定期的な監査の実施 ・文書化による管理の質を確保
<その他> ・資金へのアクセスの改善 ・妥当なコストでの保険取得
上記の項目の他にも多々メリットはありますが、企業にとってのメリットをアンケート結果として順位付けをしますと、①環境改善活動の定着 ②企業PR ③環境上のリスク回避 ④責任、役割の明確化 ⑤組織の活性化 等が報告されています。 そしてこのアンケート結果からも各企業の責任者の方々が、規格の機能を企業そのものに拡大し、企業の質を多角的に評価、向上させるシステムである事をご理解して頂いているものと思われます。
社会的グリーンシステム構築
┗ 環境問題の社会性について
企業リスクマネジメントは、当然、環境マネジメントを包含しなければならない事項ですが、環境リスクは他のリスクと異なり、そのリスクが顕在化して、直ぐに企業経営にその結果が、反映することが少ない為に、このリスク対応については非常に難しい面があります。しかしながら、社会全体としてこれらの企業や組織の環境リスク対策を認知し、その企業努力を評価し、結果を収益の向上に結び付けることが企業の取り組みにインセンティブを与えることになります。
たとえば、公害が発生するとそれは社会問題化するので、人々は環境に関心を持つようになります。これを契機に環境問題に目覚め、グリーン・コンシューマーの数が増加し、現在ではその割合も増えています。グリーン・コンシューマーとは経済成長よりも環境問題を優先して考える人たちで、当初は環境を破壊する企業や組織に対して、強い抗議を行い環境に悪い商品の不買行為から始まったが、その人数が増えることにより選挙権を行使し、政治を動かすに至り、社会全体が環境を重視するようになっています。すなわち、企業が環境にやさしい製品をつくると製品は売れ、環境問題を無視した企業の商品は排除される傾向です。
このような状況を踏まえて、企業サイドで急速な導入が見られたのが、環境マネジメントの国際規格です。この国際規格を扱う世界の代表的なものがISO(国際標準化機構)であり、企業がISOを取得することによって企業や組織のイメージ向上という認識が広まり、現在では、各企業や自治体が競ってその取得を目指しています。
環境マネジメントシステムの定義
┗ ISO14001の基本概念
ISO14001規格による環境マネジメントシステムにおいて最も重要な点は、自主性、情報公開、継続的改善の3点であり、最大の特徴は、経営者が定めた環境方針(Policy)を実行、推進するためのプラン(Plan)、ドウ(Do)、チェック(Check)、アクション(Action)、のPDCAサイクルによるシステムの改善を図ることです。
環境マネジメントシステムの認証を決定した企業や自治体は、まず内部的に自らの環境に対する考え方や方針を明確にし、自発的に環境負荷を削減できるような組織をつくらなければなりません。そしてPDCAのサイクルを通じて継続的な改善ができるしくみを構築し、外部の第3者機関の監査を受けて認証を得ることになります。
つまり、環境マネジメントシステムとは、「環境に関する経営方針を組織的、計画的に実行していく」マネジメントシステムで、従来の公害対策とは根本的に異なります。また、国際規格に基づく世界共通のマネジメントシステムを導入する点においてこれまでの日本的経営に依存するリスクマネジメント手法とも異なります。 (リスクマネジメントについては後述)
リスクマネジメントと環境マネジメント
┗ 類似点・相違点と必要性
環境マネジメントの目的が「健全な環境パフォーマンスの達成」にあるのに対し、リスクマネジメントの目的は「安全な企業経営の遂行」にあるという相違があります。 しかし、共に環境問題を主眼におくことにより、その対応に関する手順は同一です。環境マネジメントおよびリスクマネジメントの両者の管理システムは、共にPlan(計画)Do(実施)Check(チェック)Action(見直し)に基づいたサイクルのもとで継続的な改善を行う体制です。
リスクマネジメントにおいての危険処理計画は、①危険の発見、②危険の測定、③危険処理手段の選択という3つの過程からなります。環境マネジメントとの大きな違いとして、リスクマネジメントには、③の危険処理手段の選択において、リスクコントロール(危険制御)とリスクファイナンシング(危険財務)の2つの手段があり、リスクマネジメントのみが、財務的手段であるリスクファイナンシング(危険財務)を用意することが出来る点です。たとえば、環境問題以外のごく一般的な建物や商品に関する火災リスクなどは、火災保険を付すことによって、ほぼ全面的な安心を得られるわけです。
環境マネジメントにおいて発生した損害は、直接その企業に影響を及ぼすだけでなく地球環境に甚大な影響を及ぼし、1つの企業に対する財務的な手段では、環境問題による影響を補填することは、出来ないことが多いわけです。すなわち、環境マネジメントにおいては、リスクファイナンシング(危険財務)という有力な方法が存在しないのでリスクコントロールの手段を万全にするため、環境マネジメントのシステムは、非常に綿密かつ正確でなければならないのです。
環境問題は環境学としてリスクマネジメントとは別の分野で研究がされるべきという思考方法もありますが、事態がここまで差し迫って来た以上は、悠長な議論を交わす暇がありません。なぜならば、人類の生存なくして、個人生活の幸せも、健全な企業経営もあり得ないからです。